AIエージェントによる業務変革とその準備に向けてー  Agentforce World Tour Tokyo Day1基調講演レポート

 

はじめに

 2026年6月9日~10日、東京では「Agentforce World Tour Tokyo」が開催されました。このイベントではAIエージェントのビジネスでの活用を主題として、Agentforceを活用し業務に与えてきた変革の各事例などのユースケースの共有、Salesforce製品の最新情報の紹介等が取り上げられています。

 イベント自体の事前登録者数は1万4000人を超え、パートナー社が約70社、デモやセッション数が130を超えていることから伺えるように、大盛況なイベントとなっています。実際に現地に視察した私たちも強い熱量を体感いたしました。

 この記事ではDay1の基調講演で紹介された内容を取り上げ、実ユースケースを交えたAIエージェント活用による業務変革のインパクトを新入社員がレポートとしてお届けいたします!

公式サイトはこちら:Agentforce World Tour Tokyo

本記事の目次

全体概要

 この講演ではAIエージェントを活用した「エージェンティックエンタープライズ」の実現に向けたAIエージェントの活用と企業の協働のための戦略の提示が行われました。また、AIエージェント実装におけるエージェントのアーキテクチャに関する機能についての紹介もされています。セクション後半部分では実際のユースケースとしてCanada Goose、Engine、Dell、かんぽ生命の4社の事例を挙げ、実企業でAIエージェントがどのように使われ、どのような価値を生み出しているのかをデモンストレーションを含めた共有が行われ、全体としてAIエージェントのインパクトを実感できるセクションとなりました。

「エージェンティックエンタープライズ」の実現

 Salesforce社内でのAIエージェント活用による業務改善の実例が紹介され、自社内での検証が進み「エージェンティックエンタープライズ」の実現に向けて前進していることが示されました。また、AIエージェントの実装支援に向けて、Salesforceの取り組みとして3つの施策が紹介されました。

 一つ目は、顧客によるAIエージェント活用を促進する取り組みです。具体的には、Salesforceが自社での活用実績を共有するもので、カスタマーサポート部門ではAIエージェントによって自律的に解決されたサービスケースが220万件に達したことが紹介されました。さらに、カスタマーサポート向けAIエージェントとして「Piper」が日本でも提供が開始され、Salesforce Japanの公式サイト上で機能を試行可能になりました。Salesforce社が率先して本番環境にAIエージェントを実装することで、各社でのAIエージェントの導入を促進するという強い意志を感じました。

 二つ目の施策として、実装支援能力の拡張に関する取り組みが紹介されました。ここではFDEパートナーモデルの提供が取り上げられています。FDEパートナーとは、Agentforceに関する実績と知識を兼ね備えた厳選パートナー企業を指します。今回のFDEパートナーモデルでは、これらのパートナー企業が顧客と伴走し、成果を生み出す運用形態が示されました。この伴走支援により、AIの知識が十分でない企業でも、実践的な社内活用につなげられる例として説明されています。

 実際にさまざまなプラットフォームにおいても、会社の業務にAIエージェント機能を導入するフェーズで、最新技術を追跡する学習コストの高さにより、エージェント選定の難しさなど導入ハードルが高くなっている状況があります。弊社でも、さまざまなプラットフォーム上でのAIエージェントの導入のスキルを身につけるべく、日々技術検証や情報収集に取り組んでいます。

 三つ目は、AIエージェントの種類の豊富さと、すぐに利用可能なサービスの充実について説明が行われました。AIエージェントの知識が少ない方でも、6000種類を超えるAIエージェントアプリが用意されていることに加え、製造業や物流業など業種ごとのプロセスに対応した、あらかじめ準備されたエージェント化テンプレートの存在が、実企業でのAIエージェント導入を後押しすると考えられます。

 また、ここではAIエージェントと人の協働の実現に向けた4つのアプローチが紹介されています。アプローチとしてRedesign、Reskill、Redeploy、Rebalanceが挙げられ、人とAIエージェントが協働するうえで、企業が改めて検討すべき観点が示されました。ここでは、ビジネスおよび組織形態の設計、人材とAIの育成・配置、そしてそれら3つのアプローチを踏まえたビジネスモデルの調整という、4Rのステップが説明されています。特にこのアプローチは、AIエージェントをこれから業務に適用するあらゆる場面で活用できるものと考えられ、弊社でもお客様の業務にAIエージェントを適用する際の参考として検討を進めます。

エージェンティックアーキテクチャの詳細

 ここでは、AIエージェントを実際に稼働させるにあたり、どのようなアーキテクチャが存在するのか、その全体像が紹介されています。その具体例として、エージェントにコンテキストを供給して精度を高めるDATA360をはじめ、CRM360などの基盤システム、ユーザーがインサイトを得るためのTableauやSlackといった製品、そしてエージェントを稼働させるためのAgent coworkerなどの開発環境が取り上げられています。

実際の顧客事例

 ユースケース紹介では、Canada Goose、Engine、Dell、かんぽ生命の4社におけるAIエージェント活用事例が取り上げられました。各社について、デモを交えながら、AIエージェントの活用によって業務がどの程度改善されたのかが説明されています。

Canada Goose

 Canada Gooseは、カナダで創業されたファッションブランドであり、衣服を中心に店舗やECで販売を行うアパレル小売業を展開しています。同社では、AIエージェントに返品対応などの定型業務を理解させることで、テンプレート化された事務処理に加え、社内で整備された信頼できるデータに基づく柔軟な提案の実行を可能にしました。一方で、カスタマーサポート領域では、AIが誤った回答を行い顧客からの信頼を損なうリスクが大きい点も指摘されています。AIエージェントの回答精度を高めるには、AIがデータを正しく理解し思考を生み出せるよう、自社特有のビジネス用語の定義などを行うセマンティックレイヤの構築が重要です。またAIエージェントが対応できる範囲と人が直接対応する範囲を定めるガードレールの設定など、ガバナンス整備が不可欠です。

Engine

 Engineは法人向け旅行管理プラットフォームを運営する企業です。Engineでは過去に見込み客となったユーザーなどの蓄積されたデータを活用し、旅行の人数や目的に応じて新たなユーザーに最適なプランを提案する形で、AIエージェントを利用しています。また、社内のミーティングなどの管理では、Slack上の非構造化データと構造化データを組み合わせ、最適な提案を促進する仕組みもAIエージェントによって実現しています。

Dell

 Dellは、PC販売からITインフラ、ITを活用したソリューション提供まで幅広く展開しています。この事例紹介では、人が定義した経理の業務プロセスをAIが取り込み、タスク分担のワークフローを作成したうえで、AIエージェントがあらかじめ設計したテンプレートに基づき、デジタル上で必要な情報を補完しながらフローを構築するといった活用が紹介されました。このワークフローでは、属人化していた手作業のうち、AIエージェントが担える部分をAIに任せることで、役割分担を最適化し、業務効率化の推進につながった点が魅力として挙げられます。

かんぽ生命

 かんぽ生命は、保険営業を中心としたビジネスを展開しています。この事例では、過去の顧客との会話内容などの記録をAIエージェントが分析し、顧客一人ひとりに寄り添った提案や、営業側のベストプラクティスに沿った提案を実現する取り組みを紹介しています。このAIエージェント活用は、顧客からの信頼獲得や、顧客と営業のコミュニケーションの深化につながった例として紹介されています。

基調講演を聞いた感想

 本基調講演を通じて、AIエージェント活用を現実の成果につなげるには「技術を入れる」だけでは不十分で、業務そのものへの深い理解と設計が不可欠だと改めて感じました。基調講演で示されたように、エージェントは人の代替というよりも、企業の中で定義されたプロセスや役割、判断基準を前提に動く“協働者”であり、どの業務をどの粒度でエージェント化し、どこにガードレールを引くのかを言語化して初めて価値を発揮します。

 また、エージェントが正しく意思決定し続けるためには、企業が保有するデータの品質整備と継続的な蓄積が土台になります。信頼できるデータが揃っていなければ、どれだけ高度なエージェントでも誤った前提で推論し、期待と異なる行動を取り得るため、データ整備はAI活用の“準備”ではなく“運用の一部”として位置付けるべきだと再認識しました。

 さらに今後、業務の中に複数のエージェントが入り、役割分担しながらタスクを進める世界では、エージェント同士が矛盾なく協働するためのコンテクストの相互理解が重要になります。個々の最適化に留まらず、共通の用語定義や参照すべき正のデータ、判断の優先順位を揃え、組織全体として一貫した意思決定ができる状態を設計することが、「Agentic Enterprise」を現実にする鍵になると強く感じました。

 こうした学びを踏まえ、弊社としても、お客様へのAIエージェント導入を「ツール導入」で終わらせず、業務プロセスに沿った設計(どこをエージェント化し、どこにガードレールを引くのかの明確化)や、データの整備支援に一層取り組んでいきたいと思います。なお、Salesforce社からも公式に基調講演のレポート記事が公開されています。こちらも合わせて参照ください!

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