はじめに
AIの全社活用やガバナンスに悩む経営者のかた、そして実務へのAIエージェント実装を目指すエンジニアや企画担当者のかたに向けて、2026年6月9日に開催された Dataiku Summit Tokyo 2026 の参加レポートをお届けします。
生成AIは予測不能で使いにくい…そう感じている方にこそ読んでいただきたい内容です。第一弾の本記事では、キーノートの要点をレポートします!
Dataiku Summit Tokyo 2026 とは
AIの活用フェーズが「実証」から「実務での成果創出」へと移行する中、人とAIの協奏(オーケストレーション)とガバナンスをテーマに開催された大規模カンファレンスです。AIを個々の独立したプロジェクトではなく、一つのオペレーショナルシステムとして稼働させるための最新の知見と、Dataikuの新機能群が共有されました。
- 開催日: 2026年6月9日
- 開催場所: 東京ミッドタウンホール&カンファレンス
レポート
オープニング /キーノート「The Platform for AI Success」
- 場所: B1F Room A
- スピーカー:
- オープニング
- Dataiku Japan株式会社 取締役社長 カントリーマネージャー 佐藤 豊 氏
- キーノート
- Dataiku SVP, Product & Solutions, Sophie Dionnet 氏
- Dataiku SVP, Solutions Engineering & Customer Experience, Erin McGowan 氏
- Dataiku Japan株式会社 セールスエンジニアリング部 部門長 松島 七衣 氏
- オープニング
1. AI活用の現在地と「成功への3つのキーワード」
セッションは、日本法人の佐藤社長による、国内企業が直面しているAI活用のリアルな課題分析からスタートしました。
現在、多くの企業でAIの検証(PoC)や社内勉強会が一巡し、ツール自体の使用者は増えています 。しかし、それが「実務成果」に直結している企業は多くありません 。 佐藤氏は、便利なツールの無秩序な浸透(民主化)が、過去のSaaS導入時と同様に、かえって部署間のサイロ化や分断を招くリスクに警鐘を鳴らしました 。実際、『Dataiku Global AI Confessions Report CEO edition 2026』の調査結果でも、AIの完全自律稼働に対して躊躇する経営者は依然として多いのが実情です 。
この「分断」と「躊躇」を乗り越え、データとAIで企業のポテンシャルを最大限発揮するためのカギとして、以下の3つのキーワードが提示されました 。
- 人(People): 専門家(非エンジニア)が持つ個々の属人的な能力や暗黙知を、いかに再現性のある「組織力(アセット)」へと変えていくか 。
- オーケストレーション(Orchestration): 人と人、あるいは異なるAIシステム同士の滑らかな連携をどう構築するか 。
- ガバナンス(Governance): 技術者にとって、管理を単なる「束縛」ではなく、安全に活用を広げるための「リスク最小化の手段」として前向きに捉えること 。
2. 「機会」と「実装」のギャップをどう埋めるか
続いて登壇したSophie Dionnet氏は、グローバルな視点からAI導入のボトルネックを指摘しました。 AIの性能は急速に向上し、計算資源や電力などのインフラも十分な水準に整いつつあります 。しかし、それが会社全体の「働き方の変化」にはまだ浸透していません 。最大の障壁は、AIを「日常業務のドメイン知識」といかに接続するかという実装面でのギャップにあると語られました 。
3. 専門家の知見をAIに組み込む、Dataikuの革新的な新機能群
このギャップを埋め、AIを真のビジネスオペレーションに乗せるためのソリューションとして、Erin McGowan氏より具体的な新機能群が発表されました。Dataikuの最大の強みは、ソースデータから出力に至る推論プロセスを、人間が「明示的・視覚的」に定義でき、強固なガバナンスと信頼性を担保できる点にあります 。
- Dataiku E2A (Expert-to-Agent) 専門家のナレッジを直感的なビジュアルロジックでAIエージェントに組み込める画期的な機能です。ソースや生成SQLなどの推論プロセスが可視化されるため、高い再現性が担保されます。AIの確信度が低い場合には人間に判断を委ねる(ルーティングする)ヒューマン・イン・ザ・ループの仕組みや、社内用語の辞書(Glossary)管理、定型SQLのプリセット機能も備えています。これにより、非IT部門のドメイン専門家でも、実務に即した安全なエージェント開発が可能になります。
- Dataiku Cobuild 「こういうアプリが欲しい」というビジネス要件を自然言語(チャット)で入力するだけで、データパイプライン、機械学習モデル、AIエージェント、Webアプリなどを含むAIプロジェクト全体を自動生成する機能です。昨今流行している”Vibe coding”(感覚的なコーディング)の弱点である「ブラックボックス化」や「微修正の困難さ」を見事に克服しています。単なるコード生成ではなく、視覚的で検査可能な「Dataiku Flow」を生成するため、専門家自身がプロセス全体をレビューし、ロジックの確認や小回りの利く修正を容易かつ安全に行うことができます。
- Dataiku Agent Management プラットフォームを跨いで乱立しがちなAIエージェントを一元管理するための、全く新しいコントロールタワーです。n8n、Amazon Bedrock、Salesforce、Dataikuなど、どこで稼働しているエージェントであっても横断的に管理できます。単なる稼働時間(uptime)の監視を超え、実際のビジネスKPIに基づく稼働状況(ヘルス)のダッシュボードを提供し、期待される動作からの逸脱(ドリフト)をプロアクティブに検知してガバナンスを強化します。
- Dataiku Reasoning Systems(推論システム) データパイプライン、予測モデル、ビジネスルール、専門家のドメイン知識、そして人間の判断という「複数のインテリジェンス」を統合した高度な意思決定システムです。
所感:AIの失敗が教えてくれること
AI活用の本質的な壁はモデルの性能ではなく、人間側の業務の仕組み化不足にあると強く感じました。Dionnet氏が指摘した「日常業務のナレッジとの接続のギャップ」とは、人間が暗黙知として処理してきた曖昧さが、AIの失敗として露呈している状態を指すのではないでしょうか。
しかし、「完璧に仕組み化してから導入する」のではスピードが遅すぎます。一方で、佐藤氏が言及した「経営者が自律稼働に躊躇する」のもリアルな課題です。この「仕組み化 vs チャレンジ」のジレンマに対するDataikuの答えこそが、今回発表されたE2AやReasoning Systemsだと感じました。
人間とAIの安全で再現性のある協働・専門知識の共同資産化…これらによって、低リスク領域での果敢な投入と、高リスク領域での厳格なガードレールを両立できます。単なる自動化を超え、「組織がどのように仕事を学習し、変化に適応していくのか」という組織論的な問いにまで思考が広がる、非常に刺激的なキーノートでした。
まとめ
今回のカンファレンスを通じて、「AIの真の価値は、単体の優れたモデルではなく、ガバナンスの効いた業務プロセス(仕組み)の中にこそ宿る」と痛感しました。
完璧に仕組み化してから導入するのか、それともリスクを取ってまず投入するのか…このジレンマに対し、Dataikuは人・オーケストレーション・ガバナンスを統合するプラットフォームとして鮮やかな解を示してくれました。
私たちキーウォーカーも、単にAIツールを導入するだけでなく、お客様の日常業務に眠る「暗黙知」を言語化し、実務で真の成果を生み出すためのご支援を、全力で引き受けさせていただきます!
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