Snowflake World Tour Tokyo 2025 参加レポート

はじめに

2025年9月11日、12日にSnowflake World Tour Tokyo 2025が品川にて開催されました。 最新技術の紹介から導入企業のデータ利活用事例など様々なセッションが実施されており、弊社社員も参加してきましたのでそのレポートをお届けします。

本イベントについて

Snowflake World Tour Tokyoはこの「ワールドツアー」の中でも一番の規模のイベントになったそうで、実際に会場の盛り上がりは想像以上のものでした。113のセッション、40のパートナー企業、170人のスピーカー、参加登録者は1万人を超えるイベントとなり、Snowflake自体もコミュニティメンバーが1年で700人から1800人以上になったとのこと。イベント開幕から早速、Snowflakeの盛況ぶりを体感することができました。

Snowflakeとは

Snowflakeとは、クラウドベースのSaaS型のデータウェアハウスです。AWSやGoogle Cloud上で動作することで柔軟にスケーリングし、TableauなどのBIツールやDataikuなどのAIツールとも連携することでスムーズなデータの利活用が可能になります。


講演レポート

KEYNOTE

Snowflakeスピーカー

  1. スリダール・ラマスワミ 氏(Snowflake 最高経営責任者)
  2. ジョン・ロバートソン 氏(Snowflake APJプレジデント 兼 会長執行役員)
  3. 浮田 竜路 氏(Snowflake 社長執行役員)
  4. 松本 淳一 氏(Snowflake 執行役員 第一営業統括本部長)

Snowflakeのポリシー

SnowflakeはデータとAIで企業のポテンシャルを最大限発揮することを目指しています。「WHERE DATA DOES MORE: データがより価値を生む」という言葉は非常に印象的に感じました。またこのAIの時代にデータが重要であることを伝える「データ戦略なくしてAI戦略はありえない」はまさに今Snowflakeでデータを活用することの意義を端的に示した一文でした。 この説明の中で3つのコンセプトの説明がありました。すなわち、

  • EASY: 「シンプルさ」は成果を生み出す原動力。データのライフサイクル全体にわたって、データから価値を得ることを簡単にする。この思想のもと、使いやすいUIや統合されたプロダクトを提供している。またAIとのシームレスな連携により管理を容易にしている。
  • CONNECTED: データがどこにあっても、適切なデータにセキュアかつ素早くアクセスできるように連携。顧客は互いにデータやアプリケーション、モデルを安全に共有でき、迅速かつ豊富なインサイトが生み出される。
  • TRUSTED: 組込みのガバナンス、常時稼働のセキュリティ、自動化されたコンプライアンス、リカバリーによって最高レベルの安全性を実現する。また、データの検索品質と正確性を重視し、例えばCortex AIは90%以上の正確さを誇っている。

特に「CONNECTED」の中では、スピーカーであるスリダール・ラマスワミCEOとMicrosoft社のサティア・ナデラ会長兼CEOの対談映像もありました。SnowflakeとMicrosoftは、AIのモデルやクラウド間でのデータ共有など様々な領域で密な関係を保っています。このつながりの背景には、AIという「推論エンジン」にデータを供給することが組織の在り方を根本的に変革することにつながり、そのためには「相互運用性」「オープン性」そして「多様な環境の認識」が必要という考え方がありました。データの世界を代表するような2社のトップが語るこれらの考え方は、いまや世界中の企業にとって無視できないものになっているのかもしれません。

生成AIの需要や関連技術が加速度的に増大する昨今、AI-Readyで正確なデータに、万人が手軽かつ安全にアクセスできる基盤、まさに「Easy/Connected/Trusted」なデータ基盤が求められているのだと強く実感しました。

「データジャーニー」におけるSnowflake

Snowflakeは「すべてを通じてさらなる価値を創出」するといいます。つまり、データ分析の過程「データジャーニー」の各ステップで様々なサポートを提供しているということです。以下、その内のいくつかを紹介します。

  1. 2025年6月に発表されたSnowflake OpenFlowを利用することで、組織が様々なデータを取り込み、変換し、分析可能な状態にすることが容易にできます。
  2. データの柔軟性とコントロール性を提供する手段として、例えばデータ共有・セキュリティ・パフォーマンス最適化といったSnowflakeの中核機能がApache Icebergのような最新のオープンテーブルフォーマット上でも活用できるようになっています。
  3. 2025年5月に発表されたGen2 Warehouseにより、最大2倍のパフォーマンス向上を提供、リソースを自動的に最適化することでコストを増やすことなくインサイトを加速させ、データ管理を簡素化しています。
  4. Snowflake Intelligenceにより、あらゆる企業のためにエンタープライズAIを前進させています。組織内の誰でも、会話形式の言語を用いて話しかけるだけで重要な情報を素早く手に入れ、異なるシステムや場所にあるデータからインサイトを統合し、これまでにない速さで動くことができます。

これら様々な施策・サービスにより、業界を問わずにデータがより多くのことを実現する、まさに「WHERE DATA DOES MORE」を体現するAIデータクラウドがSnowflakeなのだと実感しました。

この「データがより価値を生むように」という考え方は、データが持つ価値を多くの人が最大限に活用できる下地が整いつつある今、基盤構築に携わる者として常に心に留めておきたいと思います。

各パートナー企業の取り組み

また本セッションの後半では、ゲストスピーカーの皆様が各企業での取り組みについて紹介していました。こちらも様々な貴重なお話を伺えましたが、本記事ではお話しいただいた皆様を紹介するにとどめさせていただきます。

ゲストスピーカー

  1. 加藤 恭子 氏 (全日本空輸 上席執行役員 グループCIO デジタル変革室長)
  2. 松永 久 氏 (dentsu Japan データ&テクノロジープレジデント)
  3. 長﨑 忠雄 氏 (OpenAI Japan 合同会社 代表執行役社長)

スピーカーの皆様、貴重なお話をありがとうございました!


SnowflakeデータをCRMで最大活用!Salesforce Data CloudとAIが拓く未来

スピーカー

中谷 卓洋 氏(株式会社セールスフォース・ジャパン執行役員 データクラウド本部/マーケティングデータ本部 本部長)

データと業務の分断とSalesforceの提示するソリューション

多くの企業において、データと業務の分断が課題となっています。Snowflakeなどでデータを蓄積することはできますが、業務用フロントアプリケーションなどで扱うためには個別に最適化を行う必要があり、データの価値を活用しきれていないのが現状です。

本講演ではSalesforce社が提供する「Salesforce Data Cloud」がこの分断された「ラストワンマイル」をつなぎ、蓄積されたデータの価値をフロントアプリケーションと合わせて最大限に活用する未来像を提示しました。

「ゼロコピーインテグレーション」

筆者が特に注目したのは、SnowflakeとData Cloudを連携させる手法の「ゼロコピーインテグレーション」です。これは、Snowflake上のデータを物理的にコピーすることなく、Data Cloudから直接参照・活用する仕組みです。これにより、データを安全に保ちながら、リアルタイムでのデータ活用が可能になります。従来の個別にETL処理を行って連携するような方法ではデータが二重持ちになりストレージ容量も増大していました。これに立ち向かうSalesforce Data Cloudの「ゼロコピー」はシンプルかつ強力な解決法だと感じ、この巧妙な技術に感服しました。

AIエージェントによる高度な活用

Data Cloudによって統合・整備されたデータは、AIエージェント「Agentforce」によって、さらに高度に活用されます。「デジタル労働力を生み出すプラットフォーム」として、Data Cloudによる統合データ基盤と共に日常業務で価値を発揮します。

感想

Snowflakeをただ用いるのではなく業務アプリケーションとの連携における課題を解決するというアプローチは、まさにデータ面でも業務面でも多くの知見と経験を持つSalesforce社ならではのものだと感じました。この課題感も、Salesforce社の横断的な視点から見たもので現代のデータ活用戦略においてAI機能を万全に用いるため、またデータの価値を最大限発揮するための統合データ基盤の在り方は今後様々な形で活かしていきたいと思います。


Cortex AIとAIデータエージェントによる正確な対話型アプリケーションの展開

スピーカー

榎園 健 氏(Snowflake 合同会社 シニアソリューションエンジニア)

タスクエージェントからマルチエージェントの時代へ

現在、AIアプリケーションの主流はコーディングや検索など、タスクに特化したタスクエージェント型です。Snowflake内のAI機能でも、構造化データソースではCortex Analyst、非構造化データソースではCortex Searchと個別に提供されています。

今回のセッションでは、これからのAIアプリケーションの発展がそれらを統合するマルチエージェント型となっていく将来像、そのプラットフォームとしてのCortex Agentsが紹介されました。現在でもCortex AnalystやCortex Searchとの連携は可能ですが、将来的に外部のAIエージェントやMCPサーバーとの連携が予定されているとのことです。

Cortex Knowledge Extensionによるセキュアなデータ活用

ビジネスの観点で筆者が注目したのが、Cortex Knowledge Extensionという機能です。これはSnowflakeの強みでもあるセキュアなデータ共有により、自分のAIアプリケーションに別のユーザーが提供したデータを活用できる機能です。例えば社内向けチャットボットにおいて、提供されたメディアの記事を活用することが可能です。提供者は収益化ができ、知的財産権の盗用リスクも軽減できます。データの利活用を社会全体で推進していく画期的な機能だと感じました。


GLOBAL WORKなど40 以上のマルチブランド × 1,600 店舗を動かす、次世代データエコシステムの舞台裏

スピーカー

甲斐 裕樹 氏(株式会社アンドエスティHD DX本部 データインテリジェンス部 部長)

AI時代のデータエコシステムは「共創」が鍵

近年のビジネスにおいて、データ活用は不可欠なテーマとなりました。しかし、自社のデータだけではイノベーションが起きにくく、いわゆる「自前主義」の限界に多くの企業が直面しています。AI時代のデータ活用において重要なのは、いかに多様なデータを組み合わせ、新たな価値を生み出すかという「共創」の力です。

アンドエスティHDが直面した「データのサイロ化」という課題

40以上のマルチブランドと1,600店舗を展開するアンドエスティHDもまた、この課題に直面していました。同社は、社員全員がデータに基づいた意思決定ができる環境を目指していましたが、従来のデータ基盤ではそれが困難でした。

理由は、データが用途別に分断され、連携や同期に多くの工数がかかっていたからです。さらに、システムの利用拡大に伴い、パフォーマンスやスケーラビリティの限界も露呈していました。これらの課題を解決するため、同社は社内外のデータを統合し、ビジネスを加速させる「データエコシステム」の構築に乗り出しました。

単独では価値が低いデータも、組み合わせれば宝になる

アンドエスティHDが目指したのは、自社ブランドやグローバル事業のデータに加え、トレンドや外部会員データなど、社外のデータも取り込み、連携させることでした。これにより、単独では価値の低かったデータに新たな光を当て、ビジネスの推進力とすることを目指しました。

この構想を実現するプラットフォームとして選ばれたのがSnowflakeです。アンドエスティHDはSnowflakeを中核に据えた次世代データ基盤「DataCORE」プロジェクトを推進し、従来のデータ処理速度を5〜10倍に高速化することに成功しました。

Snowflakeが実現する「共創」のためのデータ基盤

Snowflakeは、アンドエスティHDのデータエコシステムを加速させる上で、特に4つの強みを発揮しています。

  1. ストレージとコンピュートリソースの分離:データ保管と処理が独立しているため、利用状況に合わせてリソースを最適化でき、コストを抑えながら安定した運用が可能です。
  2. 柔軟なスケーラビリティ:ビジネスの成長や一時的な大量データ処理にも、必要な分だけリソースを拡張して迅速に対応できます。
  3. Dynamic Table:データパイプラインを自動化し、ほぼリアルタイムでのデータ更新を実現。開発工数を抑えつつ、常に最新のデータ活用を可能にします。
  4. Data Sharing:異なる企業間でのデータ共有を、開発なしでセキュアに実現。他社との「共創」を加速させる画期的な機能です。

データ活用の未来:AIエージェントとデータアライアンス

アンドエスティHDは、Snowflakeを活用したデータエコシステムのその先を見据え、AIエージェントの活用を計画しています。将来的には、従業員がAIエージェントと対話するだけで仕事が完結するような、データとAIが完全に統合された働き方を目指しています。

講演ではさらに、データアライアンスという概念も提示されました。これは、企業間のデータを統合することで新たな価値を創出し、業界全体がデータでつながる世界を実現しようという試みです。アンドエスティHDとSnowflakeの取り組みは、データが企業の枠を超えて「共創」の輪を広げる未来を示唆していると言えるでしょう。


弊社参加者の感想

小林

Snowflakeの技術的な進化はもちろん、AI時代におけるデータ利活用のヒントをたくさん得ることができました。特に、データエコシステムをテーマにしたアンドエスティHDのセッションは、今後のビジネスを考える上で非常に参考になりました。 また、会場全体が活気と熱気に満ちていて、Snowflakeコミュニティの活発さと楽しい雰囲気を肌で感じることができたのも、貴重な体験でした!

木谷

活気にあふれた様子を見て、Snowflakeを活用したいというモチベーションがより一層強くなりました。 日本でのSnowflakeコミュニティがとても盛り上がっているようで、今後学習などするうえでも大変頼もしく感じました。

平澤

技術系のイベントに初めて参加しましたが、楽しみながら知見を広めることができました。 会場内の雰囲気も良く、新機能の紹介やユーザーコミュニティの活発さを見て、これからのデータ活用の未来に希望が持てるイベントでした。 これからも様々なデータの知識を身に着け、活用を進めていきたいと思います。

新関

来場者数の多さから、日本におけるSnowflakeへの期待度やSnowflake社の日本マーケットでの力の入れようをが体感できました。 (本国USよりも日本での来場者数が多かったとのこと) 個人的にはSnowflakeにおける生成AI機能でCortex AIの進化に期待しています!


おわりに

今回はSnowflake World Tour Tokyo 2025のレポートをお届けしました。

弊社では、日々の業務でSnowflakeをフル活用しています。 ブログでは、実際に試してわかったことや、役に立つ情報をこれからも発信していく予定です。

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