AI、特に生成AIの進化は、ビジネスのあり方を大きく変えようとしています。ただし、「何から手をつければ良いのかわからない」「具体的な活用アイデアが思いつかない」といった課題を抱える企業も多いのではないでしょうか。
今回は、キーウォーカーが提供しているAI/生成AIユースケース創出ワークショップの資料をもとに、ビジネスの現場でAIユースケースを成功に導くための具体的なステップを解説します。
AIと生成AIの理解
まず、基本となるAIの概念を理解することが大切です。
AIとは?
AI(人工知能)とは、コンピュータがデータの傾向を学習し、自動で予測や判断を行う技術のことです。これは「魔法の杖」ではなく、良質な材料(データ)から美味しい料理(予測結果)を作り出すための「レシピ」のようなものと考えると分かりやすいでしょう。
AIの学習は人間の学習プロセスと似ており、「教師データ(問題集)での学習」→「検証データ(模擬テスト)での評価」→「テストデータ(本番試験)での評価」というステップを踏みます。そのため、データの量・質・バリエーションが非常に重要になります。AIは膨大なデータからパターンを見出すことが得意な一方で、学習していないデータの予測が苦手です。

生成AIとは?
生成AIは、AIの中でも新しいコンテンツの生成タスクに特化したものです。例えば、文章の続きを予測して生成したり、指示に基づいて画像を生成したりします。確率的に「次に来そうな単語」や「それっぽいピクセル」を生成することで、新たなコンテンツを生み出します。

生成AIは新卒や秘書が行うようなアシスタント的なタスクを得意としている一方で、高度な正確性や責任のある意思決定を伴うタスクや、文脈や意図などのニュアンスをくみ取るタスクを苦手としています。
ユースケース創出の4ステップ
成功可能なAIユースケースを創出するには、体系的なアプローチが不可欠です。
今回は、ワークショップでも実施している4つのステップを紹介します。
Step1:ビジネス課題の特定
まず最初に行うべきは、現状の業務を分析し、課題を洗い出すことです。 「AIで何ができるか」から考えるのではなく、「業務上、何を改善すべきか」という目指すべき姿を起点に、非効率な作業や属人化している業務を特定することが重要です。
ビジネス課題は、アイデアシートにまとめます。キーウォーカーのアイデアシートでは、以下の粒度でビジネス課題をまとめています。
- 解決したい課題
- これにより影響を受けるサービス / システム / 業務フロー
- 現在のユーザー(もしくは機械)の作業手順
- これを解決できるAI機能
- AIに期待する成果
- AIの訓練のために必要な情報
- 生成AIに渡したい情報

Step2:AI課題への落とし込み
次に、洗い出したビジネス課題を、AIで解決できる課題に変換します。ここでAIの特性を理解していることが役立ちます。社内のデータサイエンティストや、AIに詳しいスタッフと協働して落とし込みを行うことがおすすめです。
AI課題は、ユースケース評価シートにまとめます。キーウォーカーのユースケース評価シートでは、以下の粒度でユースケースをまとめています。
- ユースケース概要
- リスク対象かどうか(セキュリティ / 法規制 / 倫理 / その他)
- 組織のAIビジョンとの整合性
- 戦略的優位性(顧客体験 / 売上成長 / 速度向上 / 複雑性の回避 / 最適化)
- ビジネスインパクト
- 実現可能性(チェックリストで5段階評価し、点数が高いほど実現性が高い、という評価を行います。)

Step3:アイデアの評価・テーマ選定
複数のアイデアが出たら、次はその評価と選定を行います。「価値」と「実現可能性」の2軸でプロットを行い、取り組むべきテーマを選定します。

Step4:ロードマップ策定
最後に、選定したユースケースをどのような順番で、どのくらいの期間をかけて実行していくかのロードマップを策定します。

まとめ
AI、特に生成AIの導入を成功させるためのユースケース創出の流れを開設しました。
- 発散的なユースケース創出: 現場の課題を起点に、自由な発想でアイデアを出す。
- AI課題への落とし込み: 出てきたユースケースをAIの特性を理解したうえで、AI課題に落とし込む。
- 適切なユースケース評価・選定: 「価値」と「実現可能性」の軸で冷静に評価し、優先順位をつける。
今回紹介した体系的なアプローチがAIプロジェクトを「とりあえずやってみよう」から「戦略的に成功させる」レベルに引き上げるための参考となれば幸いです。
また、実際のワークショップには投資対効果算出などのいくつかの追加ワークが有ります。このワークショップを受けてみたい!という方はぜひ株式会社キーウォーカーにお問い合わせください。
