海外の不動産テック企業15選 Part.1はこちら
このページで紹介する不動産テック企業
- 3社目:不動産テックを上手く活用したコワーキングスペース展開【Spacious】
- 4社目:独自の住宅価格を推計したZestimateを活用し不動産データベースを運営【Zillow】
- 5社目:奇抜なアイディアで注目を集めたFramlabの不動産テックスタートアップ【Framlab】
- 6社目:AIに蓄積された、各地域の宿泊施設のビッグデータと、高い分析力【OYO】
自社でスペースを持たない!?レストランとの提携で大成功!
Spacious(スペーシャス)
不動産テックを上手く活用したコワーキングスペース展開とは
アメリカの企業であるSpaciousは、営業時間外のレストランの空間を間借りして、コワーキングスペースとして提供する不動産事業を行っています。
Spaciousは、2016年に米ニューヨークでPrestonPesek氏によって設立されました。現在ではニューヨークとサンフランシスコを中心に(計24拠点:2019年2月時点)、レストラン関連の空間を利用したコワーキングスペースを提供する事業を展開しています。
Spaciousの秀逸なところは、夜間営業のみのレストランと提携し、インターネット上でユーザーを管理することによって、自社で物件を持たなくてもコワーキングスペースを提供できるような仕組みづくりを行ったことです。
これにより、物件の契約等の初期費用を抑えられ、他のコワーキングスペース業者よりも安くユーザーにサービスを提供できるようになりました。
これらは全て、Spaciousがレストランの空きスペースの活用に着目し、インターネットを介した予約システムを導入し実現できたことです。Spaciousは不動産テックを非常に上手く使っている企業の1つとして注目を集めています。
Spaciousの不動産活用方法とは?
コワーキングスペースの一般的な運営状況
現在、日本のみならず世界にコワーキングスペースが存在しており、その数は年々増えてきていると言われています。また、パソコンを使った仕事以外でも、モノづくりが行えるなど様々な形態のコワーキングスペースが登場してきています。
しかし、その多くのコワーキングスペースでは、運営企業側が自分たちで物件を所有している事業形態が中心となります。
Spaciousのコワーキングスペース運営手法
Spaciousでは、自分たちでコワーキングスペースを所有せず、既にレストランとして営業している店舗の空き時間のスペースを間借りした上で、インターネットを通してユーザーに紹介しています。
そのため、運営に関わる多くのコストと時間を使うことなくコワーキングスペースを提供することができています。
WeWorkなどの従来のコワーキングスペースの利用料は、最低でも月額5万円ほどの利用料がかかります。しかし、これまで資産として活用されていなかった営業時間外のレストランのスペースを活用するSpaciousの月額利用料は、従来の約5分の1の11000円(≒99ドル)〜14000円(≒129ドル)と、かなり破格な値段で設定されています。
引用元:https://www.spacious.com/how-it-works
インターネットを活用した手間いらずシステムで利用ユーザーも増加中!
ユーザーがSpaciousのサービスを活用するには、アプリやサイト上で利用したいコワーキングスペースを確認・指定するだけです(同時に各店舗の混雑具合も確認可能)。
その後に指定したコワーキングスペースを訪れると、Spaciousの社員が応対してくれ、登録していたアドレスにWi-fiの接続パスワードが送られます。
あとは好きな席を選ぶだけで、作業をすぐに始められます。各店舗にはSpaciousのコミュニティマネージャーが派遣されており、不明な点もその場ですぐに対応してくれます。
引用元:https://www.spacious.com/spaces/list/new-york
ユーザーが、アプリやサイト上で即時に空いているコワーキングスペースや時間を確認することができるので、毎日のスケジュールに合わせた作業場所を選択することが可能です。
このように、ユーザーが手軽にコワーキングスペースを利用できる以外にも、Spaciousのサービスを利用する上でのメリットをまとめてみました。
利用するユーザー向けのメリットとは?
- インターネット上で空きスペースを手軽に確認し、すぐに利用可能。
- 全てのコワーキングスペースに性能の高いWi-fiが完備。
- 各テーブルにコンセントも完備。
- コワーキングスペースによっては、ミーティングルームとしても利用可能。
- ゲストを招待すると無料で利用可能(一部制限有)。
- コーヒーや紅茶などが全て無料で飲み放題。
また、Spaciousは大手コーヒーチェーンをライバル視していることもあって、特にコーヒーには強いこだわりがあります。
全拠点でシカゴ発のチェーン店「Intelligentsia」のコーヒーを提供しています。「Intelligentsia」は、すでに日本にも上陸し、一杯ずつドリップして淹れるブルーボトルコーヒーと並んで、アメリカでは名の知れたコーヒーカンパニーです。
お問い合わせレストランなどの不動産提供企業におけるメリットとは?
Spaciousのサービスは、営業時間外で使用していないスペースを提供しているレストランなどの不動産提供企業にとってもメリットがあります。
- 営業時間外にコワーキングスペースを提供することによる売上の増加。
- Spaciousのサービスを利用しているユーザーがレストランを知り、リピーターになることによるレストラン自体の売上の増加。
- Spaciousが提携レストラン等の紹介を行うことによる、インターネット上のサービス露出の増加。
このように、Spaciousのコワーキングスペース事業は、不動産とインターネットを活用し、ユーザーだけでなく、コワーキングスペースを提供するレストラン等にとっても利益を生む新しいサービス展開となります。
日本には、まだこのようなコワーキングスペースを展開する企業が進出してきていないので、Spaciousの取り組みには学ぶべきことが多くあります。
起業から2年ほどで約900万ドルの資金調達に成功したSpaciousでは、不動産テックを活用しコワーキングスペースの事業を今後も大きく展開していくと予想されています。Spaciousの動きに今後も目が離せません。
Spaciousの基本情報
会社名:Spacious
会社URL:https://www.spacious.com/
国籍:アメリカ
Opendoorに続けるか?
Zillow(ジロー)
iBuyerに本腰を入れ始めたZillowの今後の展開とは?
Zillowは、2006年に元マイクロソフト社員であるLloyd FrinkとRich Bartonによってアメリカのシアトルで誕生しました。
住宅購入を検討しているユーザーと不動産エージェントをマッチングさせる広告メディア事業からスタートし、2009年には賃貸物件を検索するサービスを導入しました。
屋外広告からTVCMに加え、モバイルアプリの訴求など露出度の高いZillowは、住宅購入を検討するユーザーの集客数において全米最大手の企業と呼ばれています。
Zillow独自の不動産テック活用における特徴とは?
- アメリカ全土を対象とした1億件を超える不動産データベースを運営。
- Zestimateという不動産価格査定モデルを活用して、独自に不動産価格を査定し無償公開。
- 過去の物件価格の推移や物件の航空写真、近隣地域の類似物件なども表示。
- Zillow自身でも不動産を買い取って保有。
独自の住宅評価を行うZestimateの魅力とは?
Zillow独自の住宅価格を推計したZestimateを活用することにより、インターネット上で物件の住所を入力するだけで、現在の不動産売却想定金額や売却履歴など、不動産に関する多くの情報を知ることができます。
これらの膨大なデータから導き出される情報に信頼を置く人も多く、不動産を検討するユーザーの圧倒的な集客力を維持しています。
不動産関連企業を買収することで成長し続けるZillow
また、Zillowは不動産に関連するサービスを提供している企業を次々と買収することによって事業を拡大し、専門性を高めていきました。
- 2011年 不動産のリスティング作成プラットフォームPostlets
- 2012年 物件所有者がオンラインで貸し出しツール RentJuice
- 2012年 地図ベースの不動産リスティングサービス HotPads
- 2012年 住宅ローンに関する借り手と銀行のマッチング Mortech
- 2014年 Zillow同様の不動産サービス企業 Trulia
- 2015年 不動産契約に関する書類のオンライン管理会社 dotloop
- 2016年 Zillow同様の不動産サービス企業 naked apartments
Zestimateの活用や、不動産データベースの運営に関しては、これらの買収した企業やサービスの技術が活かされています。
iBuyerに本腰を入れ始めたZillowの今後の展開とは?
現在アメリカを中心にiBuyerのビジネスは大きく広がってきています。
iBuyerの先駆者は、アメリカのOpendoorが有名ですが、Zillowも2018年4月にiBuyerへの参入を宣言しました。
もともとZillowでは、「Instant Offer」というオンライン買取再販サービスを展開していましたが、このプラットフォームに自社も買取再販業者として加わる形でiBuyerに参入しています。
ただ、Zillowでは自社で所有する物件が、不動産検索サイトの上位にくるように設定されており、不動産テック業界では「自社物件ばかり検索上位に上がる現状に嫌気がさしたユーザーは今後離れていくのではないか?」とネガティブな意見も挙がってきています。
物件を検索した際、右画面に提示される物件の左下に「Owned by Zillow」と表記されています。
今後もこのままiBuyerに力を入れる中で、収益を伸ばしていくか?それともユーザー離れに繋がっていってしまうのか?iBuyerに新規参入したZillowのビジネス展開に注目が集まっています。
Zillowの基本情報
会社名:Zillow
会社URL:https://www.zillow.com/
国籍:アメリカ
3Dプリンターで社会問題を解決!?
Framlab(フレームラボ)
奇抜なアイディアで注目を集めたFramlabの不動産テックスタートアップ
Framlabは、ノルウェーのデザイナーAndreas Tjeldflaatによって創設されました。不動産テックを活用し、現代社会が抱える問題に対して住宅デザインの面から体系的に取り組んでいる企業です。
アメリカのニューヨークとノルウェーのオスロに拠点を置くFramlabは、3Dプリンターなどのテクノロジーを駆使して様々な建築デザインを行なっています。
Framlabの取り組みとして注目されたプロジェクトに「Homed」があります。
NYCのシェルター問題を解決した「Homed」プロジェクトとは?
出典元:https://www.framlab.com/homed
Homedは、「垂直の土地」と呼ばれる窓の無いビル壁面に創造された住宅です。なぜ「Homed」がNYCのシェルター問題を解決したのか?その背景を紹介します。
ニューヨークの住宅をとりまく環境の変化
かつてニューヨークでは、手頃な価格でワンルームをシェアできる『SROユニット』と呼ばれる物件が、都市に暮らす貧しい人々に住宅を提供する重要な役割を果たしていました。
『SROユニット』とは、“Single Room Occupancy”の略で、1つの部屋を複数名で、風呂や台所を共用で使うタイプの部屋のことを言います。
1955年の住居コードの変更に伴い、新しいSROユニットの改造や建設が禁止され、1970年代の終わりにはSROユニットはわずかしか残っていませんでした。
1955年以降に廃止された推定175,000件のSROユニットは、ニューヨークの公営住宅システム全体の数とほぼ同等だったともいわれています。
ニューヨークのホームレス人口とニューヨーク市の人口の推移
また、上のグラフが示すように、ニューヨークでは人口増加率以上にホームレスの人口は増え続けています。これには3つの要因があります。
- 手頃な物件の減少
- 国からの住宅援助の削減
- 家賃規制法の弱体化
「Homed」はニューヨークの救世主!!
ニューヨークのホームレスは、1930年代の大恐慌以来最高レベルに達しており、市内の避難所となるシェルターを、清潔・安心な状態で提供するのに苦労していました。
ニューヨークでは賃料が年々記録的な上昇傾向にあります。ホームレスの支援事業を行っているHomeless for Coalitionによると、毎晩61,000人を超える人々がホームレスの避難所(シェルター)で眠っており、さらに何千人もの人が路上や地下鉄、他の公共施設などで眠っていると報告されています。
また、既存のシェルターは不衛生で、Framlabの代表Andreas Tjeldflaat氏はホームレスの男性から「ホームレスのシェルターは清潔さもなければ、プライバシーもない場所だ。」という声を聞いていたといいます。
一方で、ニューヨークの多くのビルには、壁側の垂直方向にスペースがあり、活用方法がないままデッドスペース化していました。一人暮らし用の安価な物件は激減し、国からの助成金も打ち切られていた中で、このデッドスペースを有効活用しようと編み出されたのが、「Homed」プロジェクトです。
デッドスペースを蘇らせた「Homed」の斬新なアイディアとは?
出典元:https://www.framlab.com/homed
図解:ビルに対して垂直方向(上図のブルーに塗られた部分)の土地に、3Dプリントで住居スペースを作成。
この住居の前面には、スマートガラスが活用されており、透過度の調整や広告などのコンテンツを表示することができます。この構造によって、オーナーの収益にも繋がります。
Framlabは、ホームレス向けのシェルターを建てただけではなく、最新のテクノロジーとデザインを掛け合わせ、シェルター自体が利益を生みだす仕組みも創り上げたといえます。
日本でも、「Homed」のアイディアを応用すれば、これまで以上にテナントを有効活用できるかもしれません。是非ともFramlabの今後の動向に注目しましょう。
Framlabの基本情報
会社名:Framlab
会社URL:https://www.framlab.com/
国籍:アメリカ・ノルウェー
インド発のホテルベンチャーが満を持して日本の不動産業界に参入!
OYO(オヨ)
ホテルのように即入居が可能な物件紹介サイト「OYO LIFE」とは?
2013年にインドで誕生したOYO は、主にAIの技術を不動産事業に活用し、わずか5年でインドのTOPにまで上り詰めた不動産テック企業です。
OYOは、人工知能(AI)に蓄積された、各地域の宿泊施設のビッグデータと、高い分析力を持っていることが大きな特徴です。 このAIデータによって、地域内での需給のミスマッチを最小化し、客室稼働率を最大化させることを実現しています。
また、ホテルの予約管理や経理、清掃などマネジメントに関わる業務をスマホ1つで行えるアプリも開発しています。
急速に物件数を増やすOYOが満を持して日本の不動産業界に参入!
日本での取組はインドとは違う?
OYOは、たった1つのホテルからスタートし、6年間で230の都市に8,500以上の物件を所有するまでになりました。約8,500人の社員のうち、約700人がAIやソフトウェアのエンジニアです。
ホテルの事業の領域で、テクノロジーの力をフルに活かす経営手法が大きな話題を呼んでいます。OYOは、最新のテクノロジーを提携先ホテル経営者へ提供することで、経営の効率化や収益性の改善などに貢献しています。また、フランチャイズのロイヤリティモデルでインド最大手のホテルチェーンに急成長しました。
2018年には中国に進出し、2019年9月にイギリス、10月にUAEとインドネシアに展開しています。さらに、主要株主であるソフトバンクビジョンファンドへの恩返しも込めて日本へ進出しました。
特に日本のマーケットでは、不動産業界でホテル事業を展開するという新たな取組にチャレンジしています。
ホテルのように即入居が可能な物件紹介サイト「OYO LIFE」とは?
「OYO LIFE」は、OYOが日本でサービス展開するTECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN株式会社が提供している賃貸物件サービスです。
引っ越し準備不要!ユーザーからの予約殺到中!
「OYO LIFE」は、「旅するように暮らそう」というコンセプトのもと、スマホ1つで叶う手軽さと、ユーザーのライフスタイルに合わせた自由で心地よい暮らしを提供する日本初のサービスとして注目を集めています。
- 敷金・礼金・仲介手数料が無料
- 内見なしで即入居可能
- 全部屋に対して家具・家電付き
- 利用期間は最短31日から入居可能
- 18ヶ月以内での入居ならこれまでの賃貸料金より断然お得に利用可能
- スマホで完結可能
- 最短30分で入居手続きが可能
物件の長期借り上げで、家賃を保証しながら定期的なメンテナンスと資産管理も!不動産オーナーにもメリットがたくさん!
「OYO LIFE」は、OYOがもつ圧倒的なブランド力とサービスインフラを不動産オーナーに提供し、資産を一元管理することで不動産の価値向上を促進しています。
OYO LIFEに掲載されている都内の物件
ユーザーだけでなく、不動産オーナーにとっても空室リスクを減らし、安定的な家賃収入を保証し、定期的に保全もしてくれるサービスとして注目を集めています。
- OYOの長期借り上げで安定した保証付き賃金利回り収入
- 入居者とのやり取りはOYOが担当し、不動産オーナーは手間いらず!
- 圧倒的なブランド力とサービスインフラの提供で物件価値が向上
2019年4月時点では、「OYO LIFE」は首都圏のみで展開中ですが、今後は日本各地へも広がる動きを見せています。
「OYO LIFE」の今後に注目が必要です。
OYOの基本情報
会社名:OYO
会社URL:https://www.oyorooms.com/
国籍:インド
会社名:OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN株式会社
会社URL:https://www.oyolife.co.jp/
国籍:日本
第3回の不動産テック企業15選は…
引越し先周辺情報をクラウドで提供する仕組みを提供し成功を収めた「Trulia」、過去の取引額や間取り、固定資産税などの情報をオンラインで入手できる「Redfin」他3社をご紹介します。
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No.2 | 業界の破壊者となるか!?インドの不動産テック企業OYOが日本進出! |
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No.4 | 日本人が知らない「中国の不動産テック企業」驚きの実態を解説 |
ネット普及以前から、IT業界で30年以上勤務。
ハードソフト両面でのネットワーク普及からネットコンテンツの創出運営まで幅広い業務を経験。
趣味:模型グライダー