2020/03/04 著者: 山本 喜士朗

グローバルサプライチェーン考察 Part.2はこちら

新型コロナウイルスがiPhoneのサプライチェーンに与える影響とは?

新型コロナウイルス(COVID-19)についてのニュースを耳にしない日はない今日この頃ですが、2020年3月4日現在50カ国以上で感染が確認されており、感染者数は9万人を超え、死者も3000人を超えるまで増えています。現段階では収束の目処は立っておらず、緊迫した状態は今後もしばらく続くと考えられています。

そして言わずもがな、新型コロナウイルスによる被害は感染者が体調不良に陥る、というだけではありません。日本国内でも多くの会社がテレワークを推奨していたり、通勤時間をずらすことを義務付けたり、コンサートやスポーツ行事など大人数が一箇所に集まる各種イベントが中止になったり、学校が一足早い春休みに突入することになったり、はたまたディズニーランドやUSJと言ったレジャー施設も営業を自粛している、と言った状況になっているのはみなさまもご存知の通りです。

Novel Coronavirus (COVID-19) Situation

出展:Novel Coronavirus (COVID-19) Situation

新型コロナウイルスは中国の武漢市から広まったと考えられていますが、武漢市では1ヶ月ほど前から市民に対する外出規制が行われており、医療従事者や公務員など「居民出入証」という外出許可証を持っている人以外は外出できない状態が続いています。そうなると当然、武漢市で暮らす1100万人の市民のほとんどは職場に向かうこともできず、あらゆる企業活動が停止を余儀なくされています。東京都の人口がおよそ1300万人ですので、東京都全体よりもやや少ないくらいの人数が外出規制を受けている、と考えると想像しやすいかもしれません。

この記事では、新型コロナウイルスの拡散が世界各国に毛細血管のように張り巡らされたサプライチェーンにどのような影響を与えているのかについて考察します。

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昨年、弊社のサイトで公開した​ピンチをチャンスに変える「情報活用術」〜グローバルサプライチェーン考察​の記事の中で、アップル社のiPhoneはアメリカの製品として世に出回っていますが、そのサプライチェーンを紐解いていくと実に6大陸、43カ国がiPhoneの製造に関与している、というお話をしました。

Logistics Specialist aboard

出典画像:Wikipedia Logistics

中国はiPhoneの製造にとって欠かせない重要な拠点となっており、大規模なiPhone工場がいくつもあります。鴻海精密工業は通称アイフォーンシティーと呼ばれることもある河南省鄭州市に工場を持っており、世界のiPhoneの4割がこの工場で製造されている、とも言われています。また和碩聯合科技(ペガトロン)は上海近郊に工場を持っています。これらの工場は湖北省に位置する武漢から500キロメートル以上離れていますが、サプライチェーンが連鎖的に多大なる影響を受けていることは明白です。

実際に、アップル社は新型コロナウイルスが部品の供給などiPhoneの製造過程に影響を及ぼしているだけでなく、販売店舗の営業停止や営業時間の短縮などによりiPhoneに対する需要も鈍化しているため、1〜3月期に見込んでいた630億ドル〜670億ドルの売上が「予想を下回る見通しである」、と​2月17日に発表しています​。

iPhoneの製造工場はすでに再稼働を始めているものの、製造スピードは想定されていたほどは回復しておらず通常の30%から50%程度に留まっているため今後の出荷予定に影響を及ぼすのではないかと噂されています。今期の売上が予測を下回ったのは中国国内の需要の低下による部分、つまり直接的な影響が大きいとされていますが、サプライチェーンの停滞が及ぼす本当の影響が今期以降の売上の低下となって表層化してくることも懸念されています。3月に発売されると言われている低価格アイフォーンの新機種は予定通り発売される、と現段階ではされていますが、一部の関係者らは「計画は流動的」とコメントしているそうです。

また、アップルの上層部がかねてから「​アップルにはもう一つの中国が必要​」と話していることはよく知られていますが、サプライチェーンを別の場所に移動させる、という可能性についてクロス・リサーチのアナリスト、シャノン・クロス(ShannonCross)氏は「アップル社が中国国内に有しているサプライチェーンは大規模で非常に入り組んでいます。これを別の場所で組み立て直すことは非常に難しいでしょう」と​語っています​。「インドへのサプライチェーン拡大は今後も段階的に続くとは思いますが、生産のほとんどは中国のままでしょう。」

Apple Needs Another China

出展:Apple Needs Another China

このようにサプライチェーンが少しでも停滞してしまった場合、その影響は広範囲、かつ長期に渡ります。そのため、同じパーツであっても拠点の異なる複数の業者からの入手ルートを確保する「マルチソーシング」など、サプライチェーンを止めないための施策は不可欠なリスクマネジメントであると言えます。資金的に余裕のある大企業であれば多少の損失は乗り越えられるかもしれませんが、資金的に余裕のない中小企業の場合はサプライチェーンの停滞は致命的ともなり得ます。

実際にアップル社は2002年〜2003年にかけて発生したSARSの経験から、部品の供給ルートを地理的・企業的に2つ以上確保する​「デュアルソース」化を義務付けている​ため、部品の確保に関する影響は最小限に留められているそうですが、組み立て作業の大部分は中国の工場が担っているため、組み立てラインの労働者不足による出荷数の低下は避けて通れない、と予測されています。

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新型コロナウイルスによるサプライチェーンの崩壊がもたらす本当の影響はまだこれから?

世界各地のサプライチェーンが影響を受け、製造業をはじめとする様々な産業がすでに打撃を受けていますが、​HarvardBusinessReview​が2月28日に公開した記事によると、本格的にグローバルサプライチェーンが被害を受けるのは3月半ば以降であると予測されています。部品や原料の調達を中国に依存している業者は特に甚大な被害を受け、数多くのアメリカやヨーロッパの工場も直に稼働停止を強いられることになります。

また新型コロナウイルスの影響をSARSと比較した分析結果が見受けられますが、過去18年間の中国の経済成長を加味して考えるとその分析結果を真に受けるのは危険です。SARSが流行した頃の中国のGDPは世界の4.31%でしたが、現在では16%まで成長しています。感染者数もSARSの約8000人を大きく上回る8万人以上の感染がすでに確認されています。多くの産業が中国に依存していることを鑑みると、その影響は比較にならないほど大きなものになるでしょう。

また、多くの企業はジャストインタイム方式やオフショアリング、アウトソースなどの手法を採用することでサプライチェーンコストの削減を行なっています。しかし、これによって削減されたコストは部品のストックが少ないことを意味しています。つまりサプライチェーンが機能しなくなった瞬間から製造が止まってしまうまでの時間的猶予は限りなく短いのが現状です。

すでに生産数を減らさざるを得ない状況になっている中国国外の工場も出てきています。フィアット・クライスラー・オートモービルズ社は2月14日、「中国から調達する部品が不足しているためセルビアの自動車工場を一時的に停止した」ことを​公表しました​。また、同様にヒュンダイ社も新型コロナウイルスの影響で部品調達ができておらず韓国国内の工場の生産ラインを停止した​ことを発表しています。中国からアメリカやヨーロッパへ輸送を行う場合、通常30日ほど要しますが、韓国やセルビアへの輸送はそれよりも日数が少ないため、部品の不足がアメリカよりも早く起きていることがわかります。中国からの最後の発送が中国で春節休暇が始まった1月25日とするとアメリカにそれがたどり着くのが2月末、そこからその部品を使い切るまで2週間程度と仮定すると、3月半ば過ぎ頃から多くの中国依存の企業や工場が成り行かなくなることが予測できる、というわけです。

年々重要さを増す「サプライチェーンマネジメント」

新型コロナウイルスの出現のような事象を事前に予測することはもちろん不可能です。しかし、そのようなニュースが入ってきた時にそのニュースがどのようなインパクトを持ちうるのかを先回りして考えることはある程度までは可能です。

とは言え、世界中で日々発信されている研究結果や調査結果、ニュースやレポートなど、インターネットで見つけることができる情報だけでも目視確認で追い続けることは極めて難しいでしょう。しかも発信される情報が日本語や英語である場合の方が少ないかもしれません。今回のような場合であれば、中国語のニュースや情報を網羅できるかどうかでも対策の速さは変わってくるかと思います。

世界は日々動き続けています。どこかで何かが変わり続けています。そしてそれを見つめている誰かがそこにいます。そんな断片的な情報をかき集めて一つの大きな絵を構築していく、サプライチェーンを深掘りして追いかけることで、どことどこの国の結びつきが強いか、どことどこの企業の関係性が深いか、どの原材料の価格が今高騰しているか、どんな新素材が市場に登場しようとしているか、政治的な理由、あるいは今回のような感染症によって国境が封鎖されたりはしないか、それによってどのようなインパクトがもたらされるか。これらは全てビジネスにとってリスクとなり得る事柄です。と同時にこれらの事柄はあなたのビジネスを飛躍させる鍵となる情報を含んでいるかもしれません。

そして、これらの情報を一つずつ手で集める必要はもうありません。キーウォーカーが提供しているデータクローリング技術を使うことで24時間365日いつでもあなたの会社のビジネスに関連している情報を収集し続けることが可能です。どこで発信されたどんなニュースであっても、例えば、日本ではとても話題にならないどころか日本語では読むことすらできないであろうヨーロッパの国の地方紙に小さく掲載されたニュースであっても、データクローリングで収集し、機械翻訳をかけ、それらを分析することによってなにかしらのヒントを得ることができるかもしれません。風が吹いて桶屋が儲かるまでの仮説をデータクローリングで可視化し、あらゆる情報やビジネスデータをあなたのビジネスの味方につけてみませんか?

それは万能の剣ではないかもしれません。導入しただけで成果が出る魔法の杖ではないかもしれません。しかし、それは来るべき「もしも」の時にあなたの会社のビジネスを救う希望の光になり得るかもしれません。情報だけではビジネスを救えないかもしれませんが、情報は視野を拡げ、仮説材料を増やし、先回りして計画を立てることを可能にしてくれます。つまり情報はあなたのビジネスを強くしてくれるのです。

不確かな世の中に不安を感じているなら、ぜひデータクローリング技術による情報分析の導入をご検討ください!

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