この記事は、KW創立記念アドベントカレンダーの一環としてお届けしています。
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はじめに
この1年、初めて新規事業開発の専任として動いてきました。
前例もナレッジもなく最初は完全に手探りでしたが、高速に仮説検証を回したいという意識で、積極的にLLMツールを活用しながら進めてきました。
ここでは、この1年の実務の中でどのようにLLMが機能し、どの場面で誤り、そして現在どう定着したのかを共有します。
アイデア発想よりも、思考の整理が大変
多くの人が「新規事業開発はアイデア勝負」と考えていますが、実際に1年携わってみて痛感したのは、アイデア発想よりも意思決定のための“思考整理”の方がずっと重いということです。
- 仮説を作っても具体的な言語化が追いつかない
- 調査情報は集まるが構造化できない
- 顧客課題を掘るほど視点が増える
- 視点が増えるほど判断が難しくなる
つまり「材料はあるが料理にならない」状態になりがちです。
このような状況においてのLLMの最大の価値は、“情報生成”ではなく“情報整理”だと感じています。
特に初期段階では、LLMは以下の役割を果たしてくれました。
| フェーズ | 当時の課題 | LLMの役割 |
|---|---|---|
| 市場理解 | 情報が断片的 | 論点整理・観点整理 |
| アイデア検討 | 発想に偏り | 組み合わせ・変換支援 |
| 仮説設計 | 抽象と具体の往復が苦しい | 仮説の言語化・比較 |
| 検証準備 | 顧客像・課題の切り分け | シナリオ・質問設計 |
初期はいわゆる“壁打ち相手”として活用し、どのように進めるべきかの整理も含めて、ひとりブレストの質と量が大きく変わったと感じています。
しかし、安易に頼ると“逆に思考停止”になる瞬間がある
導入初期に私がぶつかった典型的な失敗は、「答え」を期待してしまうことでした。
- “選択肢を出してくれる存在” → ○
- “正しい方向を教えてくれる存在” → ✕
LLMは情報・構造の整理までは得意ですが、「どの道を選ぶべきか」は、結局自分で決めるしかありません。
この線引きに気づく前は、“アウトプットだけ見て考えた気になっていた”という罠に落ちていたと思います。
私はここで初めて、LLMは“答えを与えてくれる存在”ではなく、“思考整理や問いを磨くための存在”だと認識を改めました。
フェーズ別に何をどこまで任せるか
現在は、各フェーズで以下のような活用をしています。
| フェーズ | 活用目的 | LLMが担う領域 | 人間の判断領域 | 代表的ツール・使い方例 |
|---|---|---|---|---|
| アイデア発散/創出 | 市場課題の発見、類似事例の探索 | 情報整理・観点拡張(課題→既存解決策→差別化要素の整理) | 何を採用するかを決める | ChatGPT / Perplexityで市場課題と既存ソリューションを整理 |
| コンセプト/仮説設計 | ターゲット設定、提供価値の言語化 | 枠組み化・言語化(ペルソナ設定・価値提案) | 実際に注力すべき領域を決定 | ChatGPTとの対話で解決策・コンセプトの整理 |
| 顧客理解/仮説検証 | 顧客課題の構造化、ヒアリング設計 | 課題構造化・仮説洗い出し、スクリプト生成 | 妥当性判断・顧客とのすり合わせ | Claude Code / Figma Makeでモック作成、ChatGPTでヒアリング設計 |
| 事業化検討/計画作成 | 収益モデル・KPI設計 | ビジネスモデル整理、試算補助 | “勝ち筋”を描き、実行に責任を持つ | ChatGPTでリーンキャンバス作成+Excel計算補助 |
| チーム内共有/推進 | コミュニケーション効率化・ナレッジ蓄積 | 議事録生成・要約 | 意思決定と方向性の最終確認 | ChatGPT+Notionで議事録自動整形、Slack連携で即共有 |
ポイント
- LLMの役割は「情報整理」「構造化」「言語化」など、人間が判断を下すための前段階を自動化する部分に集中させるのが理想
- 人間側は「選択」「妥当性評価」「責任ある意思決定」に専念すべき
まとめ:LLMはBizDevの「補助脳」である
この1年を通して痛感したのは、LLMをどう使うかで、業務の質と量が大きく変わるということです。
- 調査を速くする道具 → 〇
- アイデアの観点を広げる道具 → 〇
- 顧客インタビューの情報を整理する道具 → 〇
- 意思決定をしてくれる道具 → ×
今後もLLMを補助ツールとして活用し、自分自身で考え続けることと、意思決定に責任を持って諦めずに新規事業開発に取り組んでいきます。
おわりに
私たちキーウォーカーは 「まずは試す」「成功も失敗もオープンに共有する」 ことを大切にしています。
新しい技術やツールを積極的に取り入れ、事業成果・顧客価値に結びつける取り組みを続けています。
- 新しいことに主体的に取り組みたい
- 最新技術(生成AIやLLMなど)を活用した価値創出に挑戦したい
- BizとDevの垣根を越えて挑戦してみたい
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