はじめに
本記事では、Tableauを組織に広める立場の皆さんに向けて、
「つい難しく見せてしまう操作を、どう“かんたん”に見せるか」
その考え方と具体的なケースを紹介します。
Tableauのハンズオンやレクチャーでは、「せっかくならすごいところを見せたい」と思うものです。
特に計算フィールドは自由度が高く、使い慣れているとまずこれを使おうという考えになりがちです。
しかし——受講者の視点に立つと、それが「自分には難しそう」「自分には無理かも」と感じるきっかけになることも少なくありません。
Tableauを広めたいときに大切なのは、“すごさ”よりも“わかりやすさ”です。
操作がシンプルに見えるほど、「自分にもできそう!」という自信が生まれ、組織の中でTableauを使う仲間が増えていきます。
ケーススタディ
今回、初心者向けにTableau Desktopのデモンストレーションを行うことを想定した10のケースを用意しました。
それぞれのケースで行った想定操作と、それをより「わかりやすく、やさしく見せる」ための代替手順を紹介しています。
「自分ならどう見せるだろう?」と考えながら読み進めると、初心者の視点に立ったデモ設計のヒントが得られるはずです。
ケース1:計算フィールド「利益率」を作成
よくやる例:キーボードだけで以下を打ち込んだ。

A.左からフィールドをドラッグアンドドロップして作成する

計算フィールドは作るところにハードルを感じがちです。いかに簡単に見せるかがポイントとなります。
その計算を使用しているワークシートがあれば、そこから引っ張ってくると集計計算も付いてきてさらに簡単です。

ケース2:棒グラフの値を確認したい
よくやる例:売上をテキストにドラッグアンドドロップした。

A.パッと見たいだけならメニューバーの「Tボタン」を使用する。

ドラッグアンドドロップで出来るのもかなり便利な操作ですが、取り急ぎパッと値を確認するだけならこのワンタッチがかなり簡単です。
ケース3:棒グラフを値の大きい順に並び替えたい
よくやる例:行シェルフにある並び替えからフィールドを指定して設定した。

A.メニューバーの「並び替えボタン」を使用する。

配置されている値の場合はこのボタンでパッと設定してしまうのが便利です。
配置されてない値を使用するなど、独自で並び替えたい場合のみ詳細に設定する画面を使用すれば問題ありません。
ケース4:特定のサブカテゴリを強調したい
よくやる例:以下の計算フィールドを作成して色に配置した。
[サブカテゴリ]=”コピー機”

A.グラフのマークを右クリックし、セットを作成して色に配置する。

計算フィールドを使用しなくても実現できるものは、出来る限り計算フィールドを作成せずにデモを行うことで、Tableauは難しいという印象をいくらか和らげることが可能です。
グラフの中でターゲットを設定できるので、より直感的に操作をイメージしてもらえる手順になります。
ケース5:折れ線グラフで一番高い売上となった月の値を表示したい
よくやる例:以下の計算フィールドを作成してラベルに配置した。
IF WINDOW_MAX(SUM([売上]))=SUM([売上]) THEN SUM([売上])
ELSE NULL
END

A.ラベルの設定から「ラベルをつけるマーク」の「最大値/最小値」を使用する

ラベル(テキスト)に入れたフィールドは、マーク全てにテキストを表示するだけではなく、最大値/最小値の条件の時のみ表示するという機能があるため、わざわざ条件に当てはまらないときにNULLにする、という計算式を書かなくても実現できるケースがあります。
ケース6:サブカテゴリに対してデータ内とは異なる独自のカテゴリを使用して集計したい
よくやる例:以下の計算フィールドを作成した。
IF [サブカテゴリ]="アプライアンス" THEN "カテゴリA"
ELSEIF [サブカテゴリ]="クリップ" THEN "カテゴリA"
ELSEIF [サブカテゴリ]="コピー機" THEN "カテゴリA"
ELSEIF [サブカテゴリ]="テーブル" THEN "カテゴリA"
ELSEIF [サブカテゴリ]="バインダー" THEN "カテゴリB"
ELSEIF [サブカテゴリ]="ラベル" THEN "カテゴリB"
ELSEIF [サブカテゴリ]="椅子" THEN "カテゴリB"
ELSEIF [サブカテゴリ]="家具" THEN "カテゴリB"
ELSEIF [サブカテゴリ]="画材" THEN "カテゴリB"
ELSEIF [サブカテゴリ]="紙" THEN "カテゴリB"
ELSEIF [サブカテゴリ]="事務機器" THEN "カテゴリC"
ELSEIF [サブカテゴリ]="電話機" THEN "カテゴリC"
ELSEIF [サブカテゴリ]="付属品" THEN "カテゴリC"
ELSEIF [サブカテゴリ]="封筒" THEN "カテゴリC"
ELSEIF [サブカテゴリ]="文房具" THEN "カテゴリC"
ELSEIF [サブカテゴリ]="保管箱" THEN "カテゴリD"
ELSEIF [サブカテゴリ]="本棚" THEN "カテゴリD"
END

A.グループ機能を使用する

項目が多いと作成しなければならない計算式がかなり長くなってしまい、デモも止まってしまいます。グループ機能を使用すれば複数選択などを駆使して手軽に新しいカテゴリを作ることが出来ます。
ケース7:カテゴリ毎のサブカテゴリ別100%棒グラフ
よくやる例:以下の計算フィールドを作成した。
SUM([売上])/SUM({FIXED[カテゴリ]:SUM([売上])})

A.簡易表計算の「合計に対する割合」を使用、次を使用して計算を「サブカテゴリ」に設定する。

特にLOD計算を含む計算フィールドはユーザーに「Tableauは難しそうである」という印象を与えてしまいがちです。簡易表計算は、ユーザーが必要な表計算の計算フィールドを自動的に作成してくれる便利なツールなので活用してみましょう。
ケース8:年別サブカテゴリのクロス集計表で利益がマイナスのものを強調したい
よくやる例:利益がプラスかどうかを示す計算フィールドを作成した。
SUM([利益])>0

A.利益を色に配置、中央を0、ステップドカラーを2にして分岐を作成する

こちらも、強調だけであれば新たに計算フィールドを作成せずに実現できるものになります。少々手数は多いですが原理はわかりやすいものになるかと思います。
ケース9:売上、利益、数量の3つを表示する数表を作成したい
よくやる例:メジャーネームを行とフィルターに配置し、配置したいメジャーをフィルターで調整して作成した。

A.テキストに1つメジャーを入れた状態で、2つ目以降入れたいメジャーをダブルクリックして配置する

数表を作成する際にメジャーネームとメジャーバリューを配置した時に一旦全部のメジャーが配置されてしまうのが少々不便に見えることがあります。
ダブルクリックで配置することで見たいメジャーだけ配置出来、よりスムーズに作成できることをアピールできます。
ケース10:ダッシュボード作成画面で、先に配置したワークシートを別のワークシートに入れ替えたい
よくやる例:ドラッグアンドドロップで入れ替えた。

A.「シートのスワップ」ボタンを使用する

Tableauのダッシュボードの編集中はワークシートを配置するたびに描画に関する計算が走るので、一発でシートを切り替えられるとそれだけ時間の削減につながり、次の作業に進みやすくなるのでオススメです。
以上が今回紹介する10ケースです。いくつ知っていましたか? そして、いくつを“簡単に見せる工夫”として使えそうでしたか?
おわりに
Tableauを組織に浸透させる上で、一番の鍵は「使える人を増やすこと」です。
そのためには、まず“初心者が最初に触れる瞬間”をどうデザインするかがとても重要です。
初めて触れるときに「なんだ、意外と簡単!」と思ってもらえたら、それだけでTableauは一歩広がります。
逆に「なんだか難しそう」と感じてしまうと、せっかくの興味が遠のいてしまうこともあります。
今回紹介した10のケースは、そんな「初心者の最初の一歩」を支えるための工夫です。
ぜひ、自身のレクチャーや社内展開に取り入れてみてください。
“かんたんに見せる”ことが、Tableauをもっと広げる最短ルートです。
弊社では、Tableauのダッシュボード開発はもちろん、
組織内へのTableau浸透支援・教育プログラムの設計も行っております。
「どうすれば社内でTableauを広げられるか?」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
