無料のMAツールMautic導入前に知っておくべき事

社内でマーケティングオートメーションを導入して約1ヶ月経過。導入したのは無料のマーケティングオートメーションツールのMautic(マウティック)だ。Mauticは無料で使えるのが最大のメリット。しかし有料のマーケティングオートメーションツールと引けを取らない機能を持っている。

無料でMAが始められるとしたら使わない手はない。WEBサイトのリニューアルに伴い問合せフォームやPDF資料のダウンロード、メール配信の仕組みをMAで行うことにした。

マーケティングオートメーションの導入にあたり「導入に失敗したくない。。」「料金が高くて手が出せない。。」「試してみたいけど、難しそう。。」と思っている方に参考していただければ幸いである。

無料で大丈夫なのか?実用性はあるのか?

「無料!」と聞くと、余計な公告が入っていたり、機能が劣っていたり、必要な機能が制限されてたり、実務では使えなさそうな気がする。

しかしMauticは無料でありながらマーケティングオートメーションに必要な機能が一式揃っている。広告も出ない。実用性は十分にある。

Mauticと有料マーケティングオートメーションツールの比較表

各種MAツールの性能比較表

Mauticの主な機能

  1. 問合せフォームの作成
  2. ランディングページの作成
  3. スコアリング
  4. コンタクトリストの管理
  5. シナリオの作成
  6. 行動履歴のトラッキング
  7. アセット(PDFなどのドキュメント)管理
  8. キャンペーンメールの配信

マーケティングオートメーション入門者としては「機能がありすぎてどこから手を付けていいのか分からない!」と感じるだろう。

手順としてはフォームを作成するところからスタート。

次に作成したフォームをWEBサイトに設置。

アセット(PDFの資料)の登録やスコアリングの設定と徐々にステップアップさせる。

Mauticのメニュー

Mauticのメニュー

有料版と無料版

Mauticには3つのプランがある。

  1. ①クラウド型 有料版(機能制限:なし)
  2. ②クラウド型 無料版(機能制限:あり)
  3. ③オンプレミス型 無料版(機能制限:なし)

多分このページをご覧頂いている方は「無料でマーケティングオートメーションを使いたい!」というニーズがあると思う。なので有料版Mauticの解説は割愛する。有料版について知りたい場合はMautic Pricingの情報を参照して欲しい。

無料版(クラウド型)のデメリット

MauticのWordPressプラグインを使えば手軽にMauticのシステムをサイトに組み込める。なので導入当初はクラウド型の無料版を使っていた。

しかし運用した期間はわずか2日。いろいろとトラブルが多く利用を断念。無料とはいえ全くおすすめできない。機会損失が大きく使わないほうが良いと判断。実際に起きていたトラブルは問合せフォームの読込の遅さである。

問い合わせフォーム表示の遅延

Mauticの問合せフォームは管理画面から生成されたJavascriptのコードをHTMLにペーストして使う。

問合せフォームが設置されたページを開くとMauticのサーバ(https://ドメイン.mautic.net/)に保存されているJavascriptファイルをロードしに行く。

当然、そのファイルの読み込みが完了しなければフォームは生成されない。

外部ファイルのJavascriptを読み込む

外部ファイルのJavascript

常に読み込みが遅いわけではないが、私がWEBをチェックしていた時にはフォームの読込が完了するまで数分を要していた。この様な状態が頻繁に起きていればユーザの離脱、コンバージョンの低下は免れない。

問合せフォームの読み込み遅延対策

この現象の回避策として「手動コピー」という方法がある。この方法を使えばとりあえずフォームは表示される。

手動コピーの注意点は管理画面と設定内容が同期していない点である。

もし、管理画面からフォーム内容を変更したら、Javascriptを生成し直しHTMLへコードを貼り直さなければならない。2度手間である。

手動コピー

問合せフォームの手動コピー

できればMauticの外部ファイルからJavascriptを読み込めたほうがメンテナンス的にラクである。

SMTPの設定

クラウド型にはSMTPの設定項目がない。
ここも注意が必要。

SMTPの設定

MauticのSMTP設定画面

Mautic無料版(クラウド型)の利用用途

無料のクラウドを使う用途としては「とりあえずMauticがどんなものか知りたい」という人向けだと思う。もし、本番環境にてクラウドを使う場合にはこれらの問題も考慮した上で導入を検討すべきである。

無料でMAを運用するならオンプレミス型で

無料と書いているが、実際は無料ではない。察しの通りサーバー費用が発生する。といっても毎月数万〜数十万のランニングコストや初期導入費用が100万以上かかることもある有料のマーケティングオートメーションツールに比べれば格安である。

自前でサーバを立てるのに特別な環境は必要ない。WordPressと同様にPHPとMysqlが動作すればMauticのインストールできる。

Mauticをレンタルサーバへインストールする方法

Mauticの公式サイトからZipファイルをダウンロード

ダウンロードしたZipファイルを展開しサーバへアップロードする。

アップロード完了後、ページを開くとMySqlの接続設定が表示される。

フォームを入力しDownloadボタンをクリック

Mauticのダウロード画面

もしエラーもなく正常にインストールが完了すればラッキーである。大抵の場合PHPやMysqlのバージョンの不一致からエラーが発生し先に進めない。レンタルサーバによってはバージョンを自由に変更出来ないので対応が難しい。

Mauticの動作環境:Mautic Requirements

Mauticをインストールするのに適したレンタルサーバは?

レンタルサーバ上でMauticを運営する場合はVPS環境の方が良い。VPSでなくとも動作はするがPHP、Mysqlのバージョン指定やApache、Mysql、Cronなど設定ができない。月1,000円以下で利用できるVPSレンタルサーバーがあるのでそちらを利用しても良い。

VPS対応レンタルサーバ比較表(2017年6月30日現在)

サービス 料金 メモリ CPU ストレージ
GMO Conoha 630円〜/月 512MB 1コア SSD 20GB
さくらのVPS 685円〜/月 512MB 1コア SSD 20GB
お名前VPS 896円〜/月 1GB 2コア HDD 100GB
GMOクラウド VPS 780円〜/月 1GB 2コア HDD 50GB

たったの5分!最速でMauticをインストールする方法

Amazon EC2のAMI(Amazon マシンイメージ)を使えば瞬時にMauticの環境が構築できる。

インスタンス作成ボタンをクリックしたら【コミュニティAMI】を選択。

検索窓に「mautic」と入力すればMauticのマシンイメージが一覧で表示される。

AWSにMauticをインストールする手順

AWSにMauticをインストールする方法

この中から最新のものを選びインスタンスを作り終えれば、Mauticへログインできる。

ログイン後は必ずデフォルトのユーザID、パスワードを変更する。

必要に応じて言語を日本語に切り替える。

Mauticのログイン画面

Mauticのログイン画面

Mauticの管理画面、AWS BitnamiのSSH、Mysqlへログインする方法に関してはBitnami Mautic for AWS Cloudの情報を参照してほしい。

MauticをAWSで運用する費用

Amazon EC2のスペックはピンきりだが、t2.microでも問題なく動作した。しかしメモリ1GBだと少し頼りないのでt2.smallで運用している。

smallインスタンスの場合、月々発生する費用は約2,580円(※1)。microならその半額で運用できる。サーバのスペックは自社で管理しているリード数やアクセス数に合わせて調整する。

(※1) t2.small:0.032ドル/1時間 x 24時間 x 30日 = (約2,580円/月)
1ドル:112円(2017/06/29現在)
関連記事: AWS料金体系を1ページで纏める2017版

Mauticの問題点と課題

Mauticのインストールが無事完了しMAの運営を始めてみると見えなかった問題が表面化してくる。ツールというのは使ってみるまでわからない。

コンタクトリストの表示項目をカスタマイズできない

コンタクトリストに表示されているデフォルトの項目は以下の通り。

  1. 名前
  2. Eメール
  3. 場所
  4. ステージ
  5. ポイント
  6. 最後の行動
  7. ID

この項目にコンタクトの「社名」や「ノート(メモ書き)」を表示させたくてもできない。また、不要な項目を非表示にすることもできない。

コンタクトリスト

Mauticのコンタクトリストの管理画面。ノートなどの管理ができない

コンタクトへのカスタムメール送信時にCC、BCCが設定できない

コンタクトリストに登録されているリードへ個別にメールを送信することができる。
CCやBCCを入力するフィールドがない。

スパムメール扱いされる

Mautic経由で送信されるメールが頻繁にスパム判定され迷惑メールフォルダ行きになる現象が多発。SMTPサーバや認証方式を変えてみたり、本文に記載されている内容もリンクなしのテキストにして送信したりと検証を繰り返しても、やっぱりスパムになる。

ドメインの管理画面にてSPFレコードを設定し、ようやく迷惑メール問題が解決した。
"v=spf1 ip4:123.456.789 ip4:awsのip mx ~all"

リードからのメールを管理画面に表示できない

Mauticからリードへメールの送信はできるが受信ができない。できればGmailのようにリードからの返信が一覧で表示されるようにしてほしいものだ。


マーケティングオートメーションセミナーに参加

マーケティングオートメーションを導入して1ヶ月経過し課題が見えてきた。

「シナリオの作成方法」「スコアリングの条件設定」の方法を学ぶべく2017年6月28日に新宿で開催されたパワー・インタラクティブ主催の「マーケティングオートメーション活用のためのシナリオ設計講座」のセミナーに参加。

MAのスペシャリストから直接話が聞ける良い機会だ。

開催日 2017年6月28日(水)
開催場所 新宿三丁目貸会議室(T&Tビル)
主催 株式会社パワー・インタラクティブ
内容 マーケティングオートメーション活用のためのシナリオ設計講座
  • ナーチャリング対象の整理の仕方
  • 顧客マインドに合わせたシナリオのパターン
  • 属性と行動履歴によるスコア設計
  • ケーススタディによるシナリオ設計

参加者の中には「Oracle Marketing Cloud」「Kairos」というマーケティングオートメーションツールを既に導入済みという方もいらっしゃった。「Oracle Marketing Cloud」はデータの可視化ツール「Tableau」と連携できるそうだ。

有料のMAツールは他社SFA、CRMツールと連携しやすい設計になっている。 一応、Mauticにも「プラグイン」を使うことで外部CMSと連携が可能。海外製だけあって見慣れないサービスも多い。

Mauticのプラグイン

Mauticのプラグイン

さて、本日のセミナーのメインテーマは「シナリオ設計」である。

「マーケティングオートメーションのシナリオって何?」と思われた方も多いのではないだろうか。ちなみにシナリオの意味をネットで調べたらこんな結果がでた。

「シナリオ」の意味

「シナリオ」の意味

つまり映画の脚本である。映画やドラマにオープニングとエンディングがあるようにセールスのプロセスにもスタートとゴールがある。まずシナリオを作る上で最初にやるべきことは「スタートとゴールとは何か」を決めることだ。

スタートとは?ゴールとは?

唐突に「スタートとゴールはなんですか?」と聞かれても質問が曖昧すぎて答えが出ない。そんな時は自分が何かの商品を買う事をシミュレーションしてみる。モノを購入する以外に「レストランへ行く」、「旅行へ行く」でも良い。

例として、私がAmazonでイヤホンを購入した体験でシナリオを作ってみる。自分の出来事だから書きやすい。

イヤホンを購入するまでのシナリオ

※いつも使っているイヤホンが故障してしまい音が出なくなった。現在買い替えを検討している。

  1. スタート:情報収集
  2. ゴール:商品購入

スタート:情報収集

※具体的な行動や思考を書く(Googleでイヤホンの製品名を検索したのか、広告をクリックしたのか、何を考えているのかなど。製品までの流入経路を探る。)

  1. ブラウザでAmazonを開き検索窓に「イヤホン」というキーワードを入力。
  2. イヤホンの商品一覧を表示させる。
  3. どんなイヤホンが幾らで売られているか知りたい。
  4. 人気のある商品はどんな特徴があるのか。
  5. 商品に対する評価を知りたい。

ゴール:商品の購入

※ゴールまでは ①課題解決、②製品理解、③購入 の3ステップある

①課題解決

  1. とりあえず音が出ればいいかな。
  2. Bluetoothとケーブル式どちらを買うべきか。
  3. それぞれのメリット/デメリットは?
  4. Bluetoothの場合、バッテリーは何時間もつのか。
  5. マイク、ボリューム、再生/停止ボタンがついていた方がいい。
  6. カラフルなものもあるけど、やっぱり黒かな。
  7. 音質は重要視してない

②製品理解

  1. スペック詳細の理解
  2. 気に入った商品をピックアップし比較
  3. レビューを読み、メリット・デメリットを調査

③購入

  1. 「カートに入れる」をクリック
  2. 「支払い方法、配送日」を指定
  3. 「注文を確定する」をクリック(ゴール)

これがスタート(情報収集)からゴール(商品の購入)までのシナリオである。これを自社サービスに置き換えて考える。


問い合わせフォームを送信するまでのシナリオ

※リードは不動産のメディア運営に携わるWEB管理者。毎日の業務の一つに「SUMO」「at Home」「nifty不動産」などのメディアから新着物件情報をチェックしてその中から良質な物件をピックアップ。自社メディアに「今日のマル得物件」と題してコンテンツを公開している。

そんな日々のなかで「なんとかこの面倒な作業をもっと効率的にラクに行う方法はないか」と模索中。

  1. スタート:情報収集
  2. ゴール:問い合わせフォーム送信完了

スタート:情報収集

  1. 複数のサイトから効率よく情報を取得するにはどうしたらよいか?
  2. Googleを使い「不動産 データ 自動取得」というキーワードで検索
  3. 検索結果に表示されたページのリンクを辿り、様々なツールが存在していることを知る
  4. Windowsにインストールするタイプの自動収集アプリ、不動産のデータ販売する会社、WEBクローラ?という聞いたことのないツール。。いろいろあるんだな。

ゴール:問い合わせフォーム送信完了

①課題解決

  1. エクセルやCSVのようにデータファイルとして入手できれば効率化できるぞ!
  2. どうすればファイル化された情報を入手できる?

②製品理解

  1. 1度きりのデータ購入の方法だと新着情報が入手できない
  2. 新着情報を提供している会社もあるが、間取り、日当たりなどの肝心なデータが抜けている
  3. WEBクローラというシステムを使えば新着物件情報のCSVファイルが手に入る?
  4. 心配なのが導入の値段。。
  5. WEBクローラのサービスを提供している会社を比較したい

③問い合わせフォーム送信完了

  1. WEBクローラ開発会社を複数ピックアップ
  2. それぞれの会社へ問合せフォームを送信

以上がリードがゴールに至るまでの一連の動きである。リードの行動と思考を具体的に文字に書き起こす。重要なのはそこから先の作業だ。

コンテンツマーケティング

「情報収集」から「問い合わせフォーム送信」に到達するまでこのWEB管理者は様々な行動を起こした。それらをヒントにコンテンツマーケティングを行う。どのような情報を提供すればリードが自社の製品に興味関心を持ってくれるかを考える。

リードの行動・思考 提供するコンテンツ
複数のサイトから効率よく情報を取得するにはどうしたらよいか 不動産業界が注目!物件情報収集ツール5選!
どうすれば欲しい情報をファイル化できるのか? プロだけが知ってる賃貸情報の一括ダウンロードの裏技!
WEBクローラのサービスを提供している会社を比較したい 20**年度 最新版!WEBクローラサービスを比較してみた

リードナーチャリング(見込み顧客の育成)

米国のアドバイザリー会社であるシリウスディシジョンの調査によれば、営業担当者が「見込みなし」と判断して、フォローしなかったリードのうち、実に8割が2年以内に競合他社から製品を購入している、という驚くべき結果を公表している。
引用元:IT pro

現時点でアポイントが取れなかったもしくは失注したリードも2年以内に競合他社から製品を購入している。今すぐ製品を購入したいリードでなければ見込み客から外してしまいそうになるが、メールを使ったコンテンツ配信を行うことで継続的にリードのフォローができる。

継続的にフォローを行えばリードの「今買いたい!」というタイミングで自社製品を思い出してくれる。逆にフォローしなければ忘れられ、リードは競合へ流れてしまう。そうならないように日々、コンテンツを増やしリードナーチャリングする努力が要る。

パワー・インタラクティブへの質問

電話をかける最適なタイミングは?

「まずスコアで判定する事。スコアリングで抽出されたリードにどのようなアプローチをするか、事前に決めておく。」「スコアによって電話する(誰が電話をかけるか)、メールする、とりあえずリストにためておくなど、しきい値を決めておく事が重要」との事だ。

しきい値に達した時点でアクションを起こす。タイミングを逃さないように、アラートの設定をしておく仕掛けも必要だ。

スコアリングの条件設定のコツは?

スコアの付け方で重要なのが、「過去、ゴールに到達したリードの行動の共通点は何か?」を発見すること。ほとんどのサービスに共通しているのは会社概要ページの閲覧だそうだ。業務を依頼する場合「この会社は大丈夫だろうか?」という心理が働く。

つまり真剣に検討しているからこそ会社概要ページを見るという仮説が立てられる。それらの行動を起こしたリードはスコアを高めに付与しておく。過去のリードの行動履歴からヒントを得て最適なアクションが起こせるようにスコアリングをチューニングすること。

スパムメールにならない?

Mauticの課題の一つスパムメール扱いされるという現象は有料のMAツールでも発生するか聞いてみた。

「管理画面からドメインに対しSPF、DKIM が設定できる。その対応ができれば配信率が極端に下がることはない。逆に設定ができてなければ結果は悪くなる。」それと「件名にはビックリマーク(!)を入れてはいけない。これをやると迷惑メールになる」とのこと。

キャンペーンメール配信時に件名にビックリマークを入れてしまいそうだが、止めておいたほうが良さそうだ。

まとめ

マーケティングオートメーションと聞くと自動化もしくは半自動化できると思いきや全然そうではない。人力で地道にMAの仕組みを構築するしかない事がわかる。(シナリオを書くのは人間、シナリオを実行するのはシステム。)MAを極めれば真の完全自動化が実現できるのかもしれない。時間と労力を投資する価値は十分にある。

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